SAYURI
ハリウッドが描く「ジャパン」「芸者」の世界ってどんなもんだろう?
と、ちょっと斜めに構えて観に行きましたが、意外にも良い出来で、私はそれほど違和感や反発を感じることなく鑑賞できた。

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主人公は、貧しさゆえに置屋に売られたひとりの少女。辛く厳しい日々の中で、全ての希望を見失ったとき、彼女に運命の出会いが訪れる、「こんな美しい日に、悲しい顔は似合わない」そう声をかけたのは立派な身なりをした”会長”と呼ばれる、ひとりの紳士だった・・・。
「もう一度、あの人に会いたい」儚い願いを胸に少女は美しく変貌を遂げ、ミステリアスな輝きを放つ瞳と天性の聡明さによって、やがて花街一の芸者”さゆり”となる。そして、ついに芸者として会長と再会することになるが、その先には過酷な運命と激動の時代が待っていた・・・。
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(日本語サイトより引用)

まず、日本が舞台になっている芸者の話なのに主演が日本人じゃない。
これについては私も、なんで主演が中国人なわけ?と観る前までは思っていましたが、見た目はほとんど日本人と変わらないし(日本人は顔を見れば日本人か中国人か見分けはつくけれど)話す言葉も映画の中では英語なわけだから中国人でも日本人でも特に問題はなかったと思う。

こんな描写はおかしいとか、日本の文化が間違って伝えられると困るとかいろいろな意見があるようですが、私は芸者のことだとか花街の知識はほとんどないので、アラ探しができません。
だから、どこがどう違うのかがわからないので違和感を感じなかったのかもしれません。しかし、この小説を書いている人も、映画を撮った監督もアメリカ人なのだから、あまり厳密なことを求めるのは方向が間違っているように思う。確かに、でたらめなことを映画で表現されるのは芸者について間違った知識を植え付けることになりますが、芸者はカラダを売るのではない、ということを繰り返し言っていたし、大きな誤解を招くような表現はなかったと思う。
また、これは映画であって ”エンターテイメント”なものとしてどう観るか?という視点に立って観れば全く問題のない作品ではないか。

さて、中国人女優が芸者を演じたことについて私の意見を言うと
全く問題なかった、というよりむしろ良かったと思う。
工藤夕貴も桃井かおりも健闘していたが、チャン・ツィイー、ミシェル・ヨー、そしてコン・リーの迫力には完全に負けていたと言うしかない。
特にコン・リーの情け容赦ない、いじめっぷりは良かった。
もう、どうしようもないくらいにイヤな女で憎たらしいんだけど、女同士の争いにはあの手のキャラクターは必須。コン・リーの情念のこもった破滅的な女、初桃を演じた彼女の演技には完全に引き込まれた。もうちょっと彼女の演じる初桃を観てたかったと思ったくらいで、彼女たちの演技を観て、今回のこのキャスティングには納得した。
もちろん、日本人が演じられたら良かったのにとは思ったけれど、日本であれだけの演技と英語のできる女優がいるだろうか??
(今ふと思ったが、松雪泰子ならいいかも、初桃役)

主演のチャン・ツィイーなんだけれど、実は私はあまり彼女には惹かれなかった。確かに、水のような清らかで澄み切った印象の女性で、アジアンビューティーなのは認める。しかも芯の強そうな顔をしているし、今回のさゆり役にはぴったりだったと思う。だけど・・・なんかイマイチ足りない。
子役からチャンに変わるときも自然にすんなり入れたのは良かったのだが、
色気を感じなかったなぁ。(男性の見方はおそらく違うのだろうが・・・。)
しかも、チャン・ツィイーはああ見えて意外と肩が張っているので、着物がしっくりときていなかったのが残念。

しかし、男爵に着物をやると言われてまんまと罠にはまったシーンはちょっとドキドキしましたね。カメラワークがまた良かった。
奥の入り口から着物のある部屋(カメラのある方)へ二人が向かって歩いてくる様子をとらえつつ、襖が二人が前に進むにしたがってひとつ、またひとつと両側からスッと閉められて行く。着物を見ながら向かい合い、話すふたりの様子を格子越しにカメラが捕らえる。秘められた様子とものすごい緊張感が伝わってくるシーンで印象的でした。
また、さゆりが男爵に帯をとかれ、シュッという着物と帯がこすれる音が部屋に響き渡り着物が床に散ってゆくさまは、淫靡です。
こういうところにも「ジャパン」を感じましたね。

ひとつ謎だったのが、さゆりの踊りなんだけれど、大勢の前で披露した舞台での踊りって完全に普通の踊りから完全に離れていた気がします。あの踊りは一体なんだったのか?ああいう踊りがあるのか?謎です。
なんであそこでいきなり、エビ反ってしまったんでしょう?
あれは何を表現していたのかが不明。

ストーリーは、盛り上がりに欠けてちょっとがっかり。
ラストはそう来たか〜〜と・・・。ま、良かったなぁという思いもあるにはあるんですが、そこまで引っ張らなくていいんじゃなかったの?って思った。

最後に、日本語字幕で観たのですが疲れました。
日本の話なのに英語を話しているのがおかしい、ということではなく
彼等の話す英語が聞きづらい。
字幕を読みつつも、やはり英語を聞きながら観ているわけで、するとどうも
彼等の英語に違和感を感じる。しかも、時々日本語喋ったりするし。
日本人は日本人訛りの、中国人は中国人訛りのそれぞれ特徴のある話し方をして
いましたが、日本人俳優陣より中国人俳優陣の方が英語のレベルは上でしたね。それは明白な事実。渡辺謙、工藤夕貴に関して言えば問題なかったと思う。

余談ですが、アメリカのサイトで渡辺謙のインタビュー映像を見つけたので観てみたのですが、2分以上のインタビューで感情たっぷりに映画の説明をしており、ほぼ完璧と言える英語力でした。
素晴らしい。

意外に(失礼?)良かったのは役所広司。はっきりと、大きな声で話すことが多かった彼は(彼の演じたキャラクターの性格上そうなったみたいですが)私には非常にわかりやすかった。見習いたい。
一方、桃井かおりは若い頃英国留学していたと聞いていたのでもっと期待していたが、彼女の英語が私には一番わかりづらくて聞き取れなかったです。
あの置き屋のお母さんの喋り方だからしょうがないのかもしれないんですが、ちょっときついなぁ、あの英語じゃ。
途中でアメリカ人のお偉い軍人さんが出て来て、普通の英語を話しているのを聞いたときは妙にホッとしました。
この俳優たちの英語をアメリカ人観客が2時間以上聞くのははっきり言って
しんどいと思う。そこがちょっと心配ですが、俳優の演技力で最後まで観させることができるかどうか?にかかってくるでしょう。

コメント

サクラ
サクラ
2005年12月28日12:18

ワタシはアメリカにいるのですが、codomoさんの日記を読んで、明日この映画を観に行く事にしました。確かGeishaとかいう英題だったような。ところですっかり渡辺謙はKen Watanabeになってしまいましたよね・・・

codomo
codomo
2005年12月30日23:53

サクラさんコメントありがとうございます。
私の感想を読んで観に行くことにしたそうですが、どうでしたか?
アメリカにいるサクラさんがこの映画をどう観たのか気になります。
渡辺謙さんはすっかり「ハリウッドの人」って扱いになってきてます。
アメックスのCM(アジア人で初めて起用されたらしいですが、)日本でも流れてますが、この前買ったアメリカ版のプレミアにアメックスの広告が載っていて、完全にKen Watanabeしてるな〜と思いました。

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