「クライマーズ・ハイ」
公開初日に地元のシネコンにて鑑賞。
21:00過ぎの回だったがほぼ満席状態。

物語の舞台は地方新聞社。
日航機の墜落事故が起こって新聞社の社内に共同通信からの
速報のような放送が入った瞬間の「おぉ〜っ」というどよめき。
驚きと興奮と・・・あとは何だろう?
とにかく何かのスイッチが一気にパチン!と入る瞬間のようで
あのどよめきこそが新聞社を象徴しているように思えた。
そのスイッチがonになった瞬間から怒濤の1週間が始まる。

悠木(堤真一)が「日航全権」となり、全部を取り仕切る
ことになるのだが、事故の混乱もさることながら編集部の
上の人間たちの下らない横槍が絶えず入り

「男の嫉妬ほど浅ましいものはないのよ」

というある記者のセリフもあったが

「男たちの嫉妬に振り回され続ける悠木の1週間」を観ているようだった。

ただ、悠木はいつでも辞める覚悟があったから、誰にでも
ひるむことなく自分の意見が言える男だったのかなと思う。
そうでなければ、あそこまで言えないだろうと思う。
「一体、何のために新聞作ってるんだ?」とか。
「会社が何で成り立ってると思ってんだ?」
広告をとばして記事を載せる悠木と苦労して広告をとってきた
営業とのやり取りがあり、営業、販売、編集、それぞれの立場の
人間がそれぞれの立場でものを言う。
それはあたり前のことなんだけれど、同じ会社で働くもの
同志であれば目指すところは同じはずなのに、それがいつの間にか
自分のテリトリーを守ることだけを優先するようになってしまう。
こういうことってどこの会社でも起こりうることだなぁと
思いながら観ていた。

原作小説は横山氏の実体験を基に描かれた、という
ふれこみですが、どこからどこまでがフィクションで
何がフィクションでないのかの区別がつかないが、
墜落した翌日に30度を超える暑さの中あの険しい山に
何時間もかけて登り、私達の想像を絶するであろう
壮絶な地獄のような現場を自分の眼で見て、やっと下山して書いた
記事が載らなかった。
それが、上司によって陥れられていた結果だったとしたら・・・。
悔しいを通り越して怒り狂ってしまう気持ち
わからないでもない。
佐山(堺雅人)が鬼の形相で悠木(堤真一)に食ってかかる
シーンは、ちょっとした迫力でした。あのやさ男風の堺雅人とは
思えないくらい。

「チェック、ダブルチェック」

何故か印象に残っているシーンのひとつ。
悠木が事故原因特定の裏が取れたら一面トップで入れようと
思っていた記事を、結局100%の確信がないという理由で
ボツにした。そしてその内容が後日他紙に抜かれてしまったこと。
そのことをグチグチと言われてたが、誤報を載せることの方が問題だ。
スクープを狙う気持ちの昂りに押されそうになりながらも
たぶん、おそらく、〜だと思います、という憶測だけで記事を
書くようなことは絶対にあってはならない。
裏がとれなければ載せられない。
あとで何を言われようが、あの時はそこまでしかできなかった
ということだし、それで良かったんだと思う。
新聞記者としての姿勢とプライドを感じる好きなシーン。

最後に。
事故機に乗り合わせていた乗客のひとりの方が機内で書いた遺書は
あの当時読んで強烈に印象に残っていたが、いま聞いても涙が出る。
迫りくる死への恐怖と対峙しながらも家族に対する愛情溢れる
言葉に胸が詰まる思いだ。あの遺書を知らないという人は一度読んで欲しい。
あらためて事故の犠牲になった方々のご冥福をお祈りします。

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